無の一日

2007年10月16日日常コメント (2)

なんだろう。
体が動かない。

気づいたら、一日が経っていた。

確か、昨日も起きていられなくてすぐに横になった。
今日起きたら物凄く体が重くて
でも朝目が覚めてしまったので
洗濯ものを干して、また眠りについて

でもふとまた目が覚めると家に独りだった。

滅多にないチャンス。
重い体を引きずってピアノの部屋に行った。
弾きたかったのかどうかは解らない。

そして絶望した。
指が、明らかに動かない。
それどころか、ピアノを前にすると震える。

弾きたくなんてなかった。
でも弾かなければいけなかった。
だってまたとないチャンスだから。

腕がつってきた。
それでも無理して弾いていた。
気が付くと、ボロボロ泣いていた。
それでも、弾かなければいけなかった。

弾けなかった。
悲愴感でいっぱいだった。
なんで弾かなければいけないのかは解らない。
教えているわけでも、ましてやピアニストでもないのに。

それでも、
ピアノが弾けなくなったら自分ではないような気がした。

スローテンポな曲だと甘えている気がして
動かない指でk.310を弾いた。
まだピアノ教室に通っている時の事を思い出した。
良い思い出なんてひとつも無い。

コンクールで金賞を取ろうが
少しも喜んでくれなかった先生。
拒食になって、夏なのに冷え切り動かない指。
インフルエンザになっても出なければいけなかった作曲コンクール。

いつしか私は楽しんで弾く事なんて忘れていた。
舞台の上の私からは笑顔が消えていた。
ピアノ教室の前になるとお腹が痛くなった。

それでも弾かなきゃいけなかった。
「言葉」がそれしか無かったから。

ひとしきり泣いて、ベッドに潜り込んだ。

今日はのだめドラマから一年なのを思い出して
ボロボロ泣きながらDVDをつけた。
気づくとまた夜中になって、目が腫れていた。

何をしてたんだろう。
頭がガンガンする。
指がガクガク震える。
お腹が痛い。

どうすればいいんだろう。
ピアノが弾けなくなったら
私はどうやって気持ちを外に出せばいいんだろう。

もうそんな時は過ぎた筈なのに、
思考が昔に戻っていた。

それでも弾かなければいけなかった。

私はピアノが好きなんだろうか。
解らない。
今になっても解らない。

夢の中でも泣いていたんだと思う。
歌えない。
笑えない。
その感覚が戻ってくるのが、とてつもなく怖かった。
今でも体が震えてる。
言葉も出ない一日だった。

他にやることは幾らでもあったのに
すべてを無にしてしまった自分を恨んだ。
何かに憑りつかれ、乗っ取られたような一日だった。